建設業許可要件の経営業務の管理責任者と営業所技術者(旧・専任技術者)について

コラム

建設業では、一定の規模を超える工事を請け負う場合、「建設業許可」を取得する必要があります。許可を得るためには、法令で定められた複数の要件を満たさなければなりません。

その中でも、人的要件である「経営業務の管理責任者」と「営業所技術者(旧・専任技術者)」の配置は重要な要件であるため、詳しく解説します。

建設業許可とは

まず、建設業許可とは、建設業法に基づいて一定の工事を請け負う業者に対し、国土交通大臣または県知事が与える営業許可のことです。

許可要件(建設業法第3条)

  • 次に該当する工事を請け負う場合は、建設業許可が必要です。
    • 建築一式工事で、1件の請負代金が1500万円(税込)以上、または延べ面積が150平方メートル以上の木造住宅の工事
    • 上記以外の工事で、1件の請負代金が500万円(税込)以上の工事

許可区分と管轄(建設業法第4条)

一般建設業許可

上記のような元請として請け負う工事では、下請に出す場合に制限があります。

特定建設業許可

発注者から直接請け負い、かつ下請契約総額が4500万円(建築一式工事は6000万円)以上となる場合に必要になります。

都道府県知事許可と国土交通大臣許可

  • 許可の申請先は、営業所の所在地よって次のとおりとなります。
    • 1つの都道府県に営業所がある場合は県知事許可(県内のみの営業所の場合)
    • 2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣許可(都道府県をまたがる場合)

建設業許可要件

  • 建設業法第7条等で許可要件が定められています。
    • 経営業務の管理責任者がいること
    • 営業所ごとに営業所技術者がいること
    • 財産的基礎を有すること
    • 誠実性を有すること
    • 欠格要件に該当しないこと

経営業務の管理責任者とは

経営業務の管理責任者(経管)とは、建設業の経営について相当程度の実務経験と責任ある地位にあった者のことです。

経管は営業所の統括責任者として事業の運営に必要な能力を有していることが求められます。

具体的には建設業の経営業務に5年以上従事した経験を有する者(法人の役員、個人事業主など)が要件となっております。

  • 申請時の証明資料としては次の書類などが必要になります。
    • 該当年数分の確定申告の写し
    • 工事請負契約書
    • 注文書
    • 請求書

証明書類は都道府県によって若干異なる場合があります。

なお、経営業務の管理責任者が不在になった場合、速やかに新たな経管を選任する必要があります。もし経管が欠けた状態が続くと、建設業法第29条に基づいて、建設業許可が取り消される可能性もありますので、注意が必要です。

営業所技術者(旧・専任技術者)とは

専任技術者と名称は2024年12月に法令で営業所技術者と変更になりました。

営業所技術者とは、営業所に常勤し、技術的業務を適切に管理と指導できる能力を有する者のことです。

この営業所の常勤というのがポイントです。ほかの営業所と兼務は不可ということと、営業所に専属していても、現場にばかりいるということも認められません。

原則、許可申請を行う営業所ごとに、申請する業種に応じた技術的要件を満たす者を常勤で配置しなければなりません。(建設業法第7条第2号)

営業所技術者は建設工事の種類に応じて、専門的な知識や技術を持つことを証明する役割を担います。工事の品質を確保して、安全に施工するために不可欠な存在です。

主な資格要件

営業所技術者として認められるのは、次のいずれかに該当する者です。

国家資格保有者

  • たとえば、次の資格があります。
    • 一級・二級施工管理技士(各業種に対応)
    • 一級・二級建築士
    • 技術士(該当部門)
    • 電気工事士(電気工事業など)

建設業法や関連法令で定められた技術検定、技能検定、建築士などの国家資格を持つ者が該当します。

資格の種類によって担当できる建設業の種類が異なります。例えば、1級建築士であれば建築一式工事、大工工事、内装仕上工事など幅広い工事の営業所技術者になることができます。具体的な資格の種類は、建設業法施行規則第1条に定められています。

詳しくは、次の国交省のURLを参照ください。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf

・複数業種に係る実務経験を有する者
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000085.html

学歴+実務経験

・高等学校の指定学科卒業+実務経験5年以上
・大学の指定学科卒業+実務経験3年以上

指定された土木、建築、電気、機械などに関する学科を高校卒業後5年以上、または、大学・高等専門学校卒業後3年以上の実務経験を有する者が該当します。

ここでいう「実務経験」とは、実際に建設工事の施工に関する技術的な業務に従事した経験を指します。指定学科は、建設業法施行規則第1条の表に詳細に記載されています。

詳しくは、次の国交省のURL(指定学科一覧)を参照ください。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000085.html

実務経験のみの場合

国家資格や学歴などの要件を満たさない場合でも、許可を受けようとする建設業の種類に関して、10年以上の実務経験を有する者は営業所技術者となることができます。この場合、経験を証明するために、過去の工事実績などを具体的な資料で示す必要があります。

  • 営業所技術者の経歴を証明する書類等
    • 指定学科を卒業した証明
    • 実務経験期間分の工事請負契約書
    • 注文書
    • 請求書
    • 国家資格の合格証や免許証

証明書類は都道府県によって若干異なる場合があります。