建設業では就業履歴や保有資格を適正に評価して、技能者の処遇改善やキャリア形成を支援するための仕組みとして建設キャリアアップシステム(CCUS)が導入されています。詳しく解説します。
建設キャリアアップシステムとは
建設キャリアアップシステム(CCUS: Construction Career Up System)とは、国土交通省が推進している建設業振興基金が運営する全国統一の就業履歴管理システムのことです。
建設業は長い間、人材の高齢化や若手人材不足、技能の継承問題といった課題がありました。
そこで、技能者一人ひとりの就業実績や資格、社会保険加入状況などを客観的に記録したり可視化することで、技能者のキャリアパスの明確化と処遇改善、企業の技術力や適正な労務管理の証明、技能・経験に応じた公平な評価制度の構築などの目的をこのCCUSで達成しようとしています。
具体的には、技能者はICカードを所持して、現場入退場の時にカードリーダーをかざすことで就業履歴が記録されます。
これで事業者は、技能者の保有資格や経験に応じて、適切な労務管理を行うことができるようになります。
将来的にはCCUSの活用で入札・契約制度、社会保険加入対策、技能実習制度等とも連動して、建設業界全体の健全化と持続可能性の確保を国交省は目指しています。

建設キャリアアップシステムの登録
CCUSの登録は、「事業者登録」と「技能者登録」の2つがありますが、技能者登録について解説します。
技能者登録の流れ
1.マイページの開設(技能者自身または代行者)
2.必要情報の入力(氏名、生年月日、就業履歴、資格など)
3.本人確認書類・証明書類の提出
4.登録料の支払い
5.登録完了・ICカードの交付
必要書類
- CCUSの登録には、次の書類が一般的に必要となります。
- マイナンバーカード
- 運転免許証
- 健康保険証
- 在留カード
- 特別永住者証明書など
登録区分
- CCUSの技能者登録には、次の2段階の登録区分があります。
- レベル1(基本情報登録)での本人情報や就業履歴を登録する初期段階
- レベル2~4(能力評価登録)での保有資格や実務経験に応じて、技能レベルを段階的に評価する段階
このレベル制度によって、技能者の成長やキャリアアップの方向が明確になります。
登録の流れ
技能者登録は、原則としてインターネットで行います。
アカウント登録
建設キャリアアップシステムで技能者本人がアカウント登録を行います。
情報入力
氏名、生年月日、住所などの基本情報に加えて、職種、経験年数、保有資格、社会保険加入状況などの情報を入力します。
必要書類のアップロード
本人確認書類、顔写真、資格証明書などをデータでアップロードします。
登録料の支払い
登録には所定の費用がかかります。支払い方法はクレジットカード、コンビニ払いなどが選択できます。
登録申請
入力内容と必要書類を確認し、登録申請を行います。
審査
申請内容が審査されます。不備があった場合は、修正を求められることがあります。審査が承認されれば、登録完了でICカードが発行されます。登録が完了すれば、ICカードが郵送されます。

建設キャリアアップシステムの技能者について
CCUSの技能者とは、建設現場で実際に作業を行う職人や作業員のことになります。特定の業種や職種に限らず、とび・土工・配管・内装・電気・機械設備などいろいろな職種が対象となります。
CCUSにおける技能者とは、建設業の現場で実際に作業に従事する者となります。具体的には、次のような職種が該当します。
型枠大工、鉄筋工、とび工、土木作業員、舗装工、電気工事士、配管工、左官、塗装工、防水工、内装仕上げ工、解体工、重機オペレーター、その他、建設工事に関わる技能を持つ者
技能者登録の労働者側のメリット
- 技能者本人にとって、CCUSの登録による主なメリットは次のとおりです。
- 自分の実績や保有資格が「見える化」され、評価につながる
- 他社への転職時にも、就業履歴を証明できる
- 技能レベルが客観的に認定され、昇給や昇格の材料になる
- ICカードで出退勤管理ができ、勤怠の記録も簡便になる
また、CCUSに登録している技能者を雇用している企業は、労務管理が適正であることの証明にもなって、元請や公共工事での評価にもつながります。
現時点では、CCUSの登録は義務ではなく任意になっていますが、国土交通省は「早期登録・活用」を推奨しています。
今後は、公共工事の入札要件や施工体制台帳との連動などがすすめば、必須要件になる可能性もあります。
技能者登録の会社側のメリット
技能者の適正な評価と配置ができる
登録された技能者の「保有資格」「職長経験」「就業履歴」「能力評価レベル」などが可視化されるので人材の力量を正確に把握でき、現場ごとの適正配置ができるようになります。
元請企業や発注者からの信頼や評価の向上
- 技能者がCCUSに登録されることで見える化されます。
- 適正な労務管理(就業履歴・社会保険加入など)
- 安全管理意識(資格保持者の有無)
- 技術力・施工体制の強化(能力評価レベル)
これによって公共工事や大手ゼネコンとの取引での評価が向上して、受注機会の拡大にもつながります。
施工体制台帳・作業員名簿との連動が可能
施工体制台帳や作業員名簿におけるCCUS情報の活用が本格化しています。登録技能者は、現場ごとの出面(でづら・出勤状況)や資格保有状況を自動で反映できて書類作成の効率化・省力化が図れます。
社会保険加入状況の確認が容易になる
技能者登録は社会保険の加入証明が必要です。技能者の登録状況を見ることで、協力業者も含めた社会保険加入状況のチェックができます。元請業者が適切な社会保険管理を行っているかどうかの判断材料となってコンプライアンス対応にもなります。
若手人材の育成・定着
CCUSは、若手技能者にとって頑張れば評価される仕組みを提供するようになっているのでモチベーションの向上や離職率の低下につながります。